社会に貢献する素晴らしい人間作りに協力します。|池上公介の教育論|2003年度札幌タイムス掲載(全記事掲載中)

【第5回】
毎日通学OK、個別指導中心に、校則あり。新タイプの通信制高校

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今年2月のある日、池上学院の電話が鳴り止まなかった。「池上先生、ついに学校をつくるんですってね!ぜひ理想の学校をつくってください」「新聞で読みました、池上先生。とうとう高校をつくられるそうで。楽しみにしてますよ!」

新聞報道で私が2004年4月に通信制高校を開校予定であることを見て、知り合いや昔の教え子たちが電話をかけてきてくれたのだ。

「池上学院高等学校(仮称)」が、北海道の審議会の承認を得た。れっきとした「一条校」である。「一条校」とは、聞き慣れない言葉だろう。学校教育法の第一条に「学校とは、法律で、小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする」と規定されている。この規定に 98年、中学・高等普通教育と専門教育を一貫して行う「6年制中等教育学校」が加わった。つまり、通信制高校も南高や北高と同じ高等学校であるということだ。

今まで私は学習塾・予備校の経営だったが、ようやく「学校」を営むようになるのだ。

なぜ私が「学校」を開かねばならないのか、説明したい。それが現在、日本の教育現場が抱える課題と現状につながると思う。

日本の教育現場には大きな問題が三つある。それは「不登校」「中退」「学力不振」である。

「不登校」とは「学校嫌い」を理由に、年間に30日以上学校に行かなかった生徒のことを言う。今この不登校が急増している。しかし、学校では有効な手立てを確立していない。学校の先生がいくら電話をかけても、いくら家庭訪問をしても不登校の生徒は学校に戻ろうとはしない。学校にうまく戻れるのは、本当にわずかの数なのだ。

日本の教育の大きな問題の二つ目は「中退」だ。学校の規則を破ってしまい、学校を辞めざるをえなくなった生徒が毎年、中退として多数出ている。また、色々な事情でその学校と合わないため中退する生徒も多数いる。

中退も年々増加している。原因は日本の社会の規範が崩れてきたことにある。芸能人には茶髪、金髪にピアス、タトゥー(刺青)が目につくようになってきた。毎日テレビを見ている子どもたちは、それがカッコイイものだと思い、まねをする。街に出ても茶髪、金髪、ピアスが多い。さすがにタトゥー(刺青)は一般化していないが…。

私が入学の面接をしていても「この子はわがままで困ってるんですよ。学校でも先生の言うことを聞かなくて…。服装とかも学校の規則破ってばっかりなんです」と言うお母さんが茶髪にピアス、ということが日常茶飯事になりつつある。

そんな時、私は間髪入れずに「お母さん、あなたが茶髪にピアスでは、子どもも学校の服装ルールを守ろうとはしませんよ。まず、お母さんがお手本になってください」と言う。これで目を覚ましてくれるお母さんは救いようがある。

このように社会全体の規範が崩れていては、子どもが学校の規則を守れず、中退となるのは当たり前の話である。中退となった子は例え心を改めてやり直そうと思っても、どこにも受け入れられず、学校に通うことをあきらめざるをえないことが多い。

三つ目の大きな問題は「学力不振」だ。学力不振とは、ちょっとやそっとの勉強の遅れではない。何学年も前から勉強が全くできていないことを言う。高校3年生なのに、小学校で習っているはずの分数ができないというのは完全に学力不振だ。これは単に勉強をサボってしまったのが原因の場合と、脳の器質障害の場合があるので、その判断が難しい。

通常の学校は一斉に授業を進める集団講義形式である。いくら熱心な担任の先生がいても、学力不振の子の勉強遅れをカバーするのは極めて困難だ。学力不振の子は、理解できない授業をただひたすら我慢して聞き続けるしかない。卒業までの3年間ズーッと。そして、卒業しても学力は遅れたままだから進学もできないのだ。

これらの状態の子をなんとか救ってほしいという親が、以前から多数私のもとを訪れている。そこで私は数年前から「池上学院高等学校(仮称)」の前身となる通信制高校サポート校「札幌高等学院」を開設した。「通信制高校だけでもあまり聞いたことがないのに、サポート校とはなんだ」という人も多いだろう。

高校には全日制・定時制・通信制の3種類がある。通信制は基本的には学校に通うことなく、通信教育で勉強が進む高校である。自学自習が基本で、三つの条件で成り立っている。

(1)リポートを提出すること。これは課題のリポートを期日までに提出すれば良い。そのリポートは添削されて後日返却される。つまり、添削指導のことだ (2)テストを受けること。通信制とはいえ学校だから学習がどれだけ身についているかを確認するためである(3)スクーリングに出席すること。スクーリングとは「面接指導」とも言い、自宅での自学自習やリポートによる添削指導で不十分な点について、先生から直接指導を受ける授業のことである。1対1の個別指導が原則である。

スクーリングは言い換えれば「登校日」ということになる。科目によってスクーリングに要する日数は異なるが、大ざっぱに言えば月に2回ほどスクーリングに出席すれば十分である。つまり、年間20回ほどの登校日があるだけである。毎日通う必要がない点が、特殊な事情で時間的に制約されている者にとっては魅力的である。

本来、通信制高校は働いているために毎日学校に通うことができない人たちのために存在していたが、近年は不登校の生徒や中退した生徒、学力不振で全日制についていけない生徒を受け入れるという役割に代わりつつある。

自分の子どもや孫には関係のない話と思うかもしれないが、北海道の中学校では、すでに1クラスに約1名が不登校。高校における中退も、やはり1クラスに約 1名の割合なのだ。自分の子どもや孫も不登校や中退になる可能性が十分あると考えて、もしもそうなったときの対処法を知っておくのは決して損なことではない。

学力不振については、文部科学省もはっきりとした数値を把握していないようだ。しかし、相当な数の学力不振の生徒が存在していると思われる。例えば、中学校のランクで「K」「L」「M」といった低いランクにあるのは、学力不振と考えてほぼ間違いない。

Mというと最低のランクである。すなわち3年間通信簿が全教科オール「1」をとるとMランクになるのだ。「あの子はK、L、Mの最低ランクだから、勉強を教えても無駄だ。学力不振だよ。あの子は進学もできないよ」と診断を下す学校の先生が多い。

しかし、実際に学校でさじを投げられて、進学不可能なはずのK、L、Mの最低ランクの子どもたちを私は教え直して、何度も立派に進学させてきた。適切な指導さえあれば、学力不振の子どもも人並みにすることができるのだ。

こうしたことに対応するため、私は通信制高校サポート校「札幌高等学院」を設立した。サポート校というのは、通信制高校で不足している勉強面をサポートする学びの場である。サポート校は毎日開いているので、毎日通ってどんどん先生に質問することができる。学校生活をやり直したいという者のために、ホームルームや学校行事なども用意している。例えば、体育大会や修学旅行、スキー遠足などの学校行事がある。

生徒たちは「札幌高等学院」で、もう一度学校生活をやり直すことができるのだ。その代わり生徒たちには制服もあり、通常の高校と同様の規則もある。学校の規則を破って中退となった生徒も来るので、こういった規則を疎ましがる子もいる。しかし、私は生徒たちに勉強だけではなく、生活態度や礼儀作法を教えたいので、あえて通常の学校以上に厳しくしている。そうでもしなければ、一度学校の規則を破ってしまった子どもなのだから、きちんと改めることができないのだ。

さて、このようにかなり充実した通信制高校サポート校「札幌高等学院」を営んできたが、最近、生徒や親御さんのニーズが多岐に渡ってきた。それらに対応するためには、サポート校ではどうしても機動性に欠ける。通信制高校と連携して動かなければならないので、単独で決定し、動くことができないからだ。そして、一番の問題点は経済的な問題だ。通信制高校とサポート校の2校に在籍するので、どうしても金銭的な負担が大きくなる。そこでいっそのこと通信制高校をつくろうと思った。サポート校の機能をそのまま合体させた通信制高校を、だ。

来年4月にできる「池上学院高等学校」は通信制高校でありながら、毎日通うことも可能にしようと考えたのだ。ということは、サポート校はもう必要なくなる。もちろん毎日通う必要がないという生徒は、通常のようにスクーリングだけ登校すればよい。毎日通学することが難しい不登校気味の生徒は、やはりスクーリングのみでよいし、徐々に通えるようになればそれも良いだろう。最初は他の生徒と接触したくないのであれば、それも個別指導という形で対応できるだろう。生徒のニーズに合わせた細かいコースを、複数設定しようというのだ。

私は今まで、通信制高校のスクーリングに大きな不満を抱いていた。スクーリングは面接指導である。つまり個別での指導ということだ。ところがほとんどの通信制高校は、スクーリングと銘打っておきながら、実際には何十人という生徒を集団講義している。これではせっかく登校してきた生徒も満足に質問をすることができない。

通信制高校に入る生徒は1人1人の学力がまるで異なる。場合によっては学力不振の生徒もいる。集団講義ではまったく授業についていけない生徒もかなりの割合出てくることになる。そこで私は個別指導を中心とした新しいタイプの通信制高校を作ろうと決意したのだ。この新しいタイプの通信制高校「池上学院高等学校」ができれば、「不登校」「中退」「学力不振」の子どもに福音となるだろう。福音となるべく、私は全力を尽くしたい。

【札幌タイムス 2003年5月22日(木) (21日発行) から、許可を得て転載】

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